ゲルハルト・リヒター「アプストラクテス・ビルト(809―4)」
リヒターの絵が27億円で落札なんて記事がまとめサイトに出てました。
【完全に落書き】という見出しで。
モノの価値っていうのは難しいですね。それに判断を下すっていうのはもっと難しい。
僕はこの価格はリヒターのこれまでの経歴や彼の現在の年齢などを考えると、別段、驚く程の値段ではないように思います。
オークションは2人以上の人間が競れば値段はどんどん跳ね上がって行くわけですから。それだけの値段を出しても欲しいというリッチな人間がこの世にいた。ただそれだけのことだと思います。
こういう記事を読むと個人的に「醜いアヒルの子」の話しが頭に浮かびます。醜い、醜いといじめられていたその鳥は、なんと実は白鳥であったっていう。みんなと違う、周りをみると劣っているようにみえる、みんなそう想っている。だからくだらないものだろうという判断。ポピュリズムのネガティブな部分をどうしても感じてしまいます。
価値というのは色々な歴史の堆積や、その時代の背景や決まりごとのなかで作り上げられていくものであって(もちろん政治的な力関係なども含まれます)、一見して判断できるものではない。
学んでいく中ですごさが判るというものがこの世の中にはあるわけで。
だからこそ権威といわれる人達がいて、その人達がそのモノの凄さを伝えたりしていくわけですが。
でも、今の世の中、権威というものの信用がグラついているなかで、ポピュリズムに頼るなっていう方が無理があるのかなぁなんて言う風にも思います。
たしかに絵具を塗り付けただけ、といわれればそれまでですからね。
ただ、僕はこの記事を見て面白いなと思ったのは、先月、ポップアートの巨匠であるウォーホルの作品が財団から大量に市場に出されるというような記事のあとで、このリヒターのニュースが出て来たこと。
アンディー・ウォーホル「マリリン(ピンク)」
絵画というフィールドのなかで、光やイメージといったものをテーマに崇高性を追い求めるリヒターの作品が支持を受け、価値が上がっている。
ポップアートのお家騒動の影でリヒターのこのようなニュースが出てくるということが何か時代や価値観の変動を象徴しているような、そんな気がしてなりません。
ichi
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