G大2次試験最終日。
一日目は下地づくりだけに留まり、今日一日が勝負となる。
6時間でどこまでやれるか...。やれるだけやるしかない。
イーゼルに架かったキャンバスを前に座り、道具を広げ、制作の準備をする。そして僕はファイルから一枚の写真を取り出した。
昨日の試験終了後、家に帰ってファイルを眺めていた。絵を描く資料として集めていた雑誌の切り抜きやコピーをまとめたお手製のファイルだ。
二年間かけて集めた量は膨大で、様々な思い出が駆け巡る。
「あのときはこの絵に憧れて、それっぽいのずーっと描いてたなー。」などとその当時のことを思い出す。
そんなとき、一枚の写真が目に止まった。
フルヌードの男性が草原でエビぞりになって宙に浮いている、なんとも形容しがたい不思議な写真。
「...これ、G大の課題にぴったりじゃん。」
構図が定まらないまま焦らずに描きださなくてよかった。この写真をモチーフに勝負を賭けることにした。
昼飯もとらずに一気呵成に描き上げる。
最後の受験。
最後の試験。
異常なまでの集中力が生まれる。筆は軽く、思考はクリアだ。
描き上げたあとに確かな手応えがあった。
ふと冷静になり周りの絵を見る。
「あれは...もっとこうすれば良いのに...」
勝手に頭の中で他人の絵を講評する。不思議なことにこのとき、僕にはG大の入試に対しての明快なビジョンが見えていた。
「もっとこうスコーンとさぁ...。」
「世界観が...。」
「オリジナリティーのある...。」
講評で言われた様々なことが頭を駆け巡る。そのときはわからなかったが、今ならはっきりその言葉の意味が理解できる。
「自分が本当に表現したいこと、一番大切なことを正直に出すこと。」
今なら、その言葉の意味がわかります!先生!
試験終了後、試験会場をあとにする。荷物をまとめ退出する。四日間通ったG大絵画棟の8階のアトリエ。
ここで会田誠や小沢剛など、今をときめく様々な才能が学び、制作をしていたのだな...。夢のような四日間だった...。
そんなことを思い、キャリーを引いて教室を出た。
つづく
2006年04月14日
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